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コラム#9

仕事柄か毎日破産や倒産の情報サイトを見ることが多い。最近は人手不足による運送業、建設業や介護業界の破産が目立つようになってきた。また、医療機関の破産や倒産は意外に多い。毎日のように新しい会社が生まれ、反対に生き残れずにマーケットから取り残される会社も少なからずある。

 

 筆者が前職の大学のインキュベーション施設で勤務していた時、その地域は宇治茶のネーミングを冠することができる産地であった。特に抹茶の生産は日本でもトップクラスであった。仕事柄、何社かの製茶業者を訪問、見学させてもらう機会もあったが、最も進んでいた業者は国内の名だたる飲料メーカーにペットボトルの緑茶飲料用の原料茶葉を供給していた。「A社の〇〇茶はウチが作ったようなもの」などとも豪語されていた。同地区の製茶業者はいずれも伝統があり、創業100年を超す業者が多かった。

 

 だが、どうだろう。昨年相次いで老舗の業者が2社破産したのである。以前から業況はよくないとは聞いていたのだが、売上の減少を資産の切り売りなどで凌いできたがどうにも耐えられなくなったようである。インバウンド客にも抹茶をはじめ日本茶は人気があるのだが、老舗のプライドか伝統に胡坐をかいて新しい市場を開拓する努力を怠っていたようである。危機感を持った業者は次を見据えて次々と手をうっている。たとえば日本茶に様々なフレーバーを加えることにより広く海外に市場を求める業者や前述のペットボトル飲料へのシフト、など。

 経営者は常に世の中のトレンドを読み取り、次の一手を打たなければならない。老舗のプライドが邪魔をして旧来の枠を超えるような取り組みをしないと市場からは淘汰される。

 

こうならないようにするにはどのようにすればよいのだろうか?それには自社が置かれた環境をSWOT分析してみるのも一つである。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を書き出して視覚化してみるのも良いだろう。これをもとに自社の戦略を練っていくのである。もちろん金融機関など関係者の協力も不可欠である。これらを実現するためには常に視線を全方位に向け、アンテナを張り巡らしておくことが重要である。今が良いから「現状維持で行く」はなく、常に次の一手を考えて前に進んでいかねばならない。商品やサービスにもライフがある。それが尽きたときのことを考えていかなければならないのである。